2009年 第41回中部建築賞 受賞「つながる家/S-house-日置江」
自然とつながり、家族がつながるバリアフリーの家。
岐阜市の郊外に完成したこの住まいは、接道は北面で、東側を除く周囲は田畑に囲まれた、のどかな環境となっている。東西に長い敷地で北面は道路境界に近く、西の壁を斜めにカットすることで見通しをよくし、個性的な外観をも作り出した。
要望は、介護しやすい工夫をしてほしいこと、家族がふれあって生活できる家、そして自然素材できれいな空気の住まいというものだった。
介護の必要からプライバシーを重視したつくりにすべきなのかと思案しつつ、現地の様子をみて感じ取ったのは、閉ざした家にする必要はなく、まったく逆のコンセプトだった。この自然に囲まれた環境で自然と人が積極的に関わることが必要と考え、あえて開放的な住まいを提案した。隣の田畑で実りや四季の変化を感じ、支え合いながら自立した暮らし方を目指したプランとした。
まず、介護への対応からバリアフリーが必要となるが、車いすを想定した動線の確保が最優先だ。玄関ポーチの高さ調整、スロープ、室内フロアは段差をなくし、水回りは広くとり、部屋の戸はすべて引き戸としている。そして深夜電力を利用して土壌を暖め、日中はその輻射熱によって屋内の表面が暖められる土壌蓄熱式輻射暖房で家全体を暖かくする仕様を提案した。居室から浴室まで一定の温度で保たれ、ヒートショックを防ぐ効果があるからだ。
自然素材の仕様については、内部壁仕上げは調湿効果の高い漆喰を主とし、床はパイン無垢フローリング、天井は地元の杉板としている。